クラフトビールで乾杯!

もし、UPIがレストランを作ったら!? そんな遊び心から生まれた架空の「UPIレストラン」
北欧ソト料理家で、UPIナビゲーターシェフ寒川せつこが毎号ゲストを招き、共にお客様をもてなします。第2号のゲストシェフは、デンマーク出身のマルチクリエイター、イェンス・イェンセンさんです。


ラップサンドは“焦げ”もスパイス

夏真っ盛り。この力強い太陽とのもとでは、よく冷えたビールに勝るものなし。
UPIの全店舗でクラフトビールを出していることもあり、この日のテーマは「クラフトビールに合う料理」。まずイェンスさんが、北欧でよく食べられているラップサンドを提案してくれた。

「僕がよく焚火でやるのがナスの丸焼きです。ババガヌシュというディップを作って、トルティーヤみたいな薄いパンに塗り、サワークリームを加えて、そうだな、サーモンを焚火で焼いて入れるといいですね。スパイスを効かせればビールにすごく合います」
キャンプが好きで、最近は自ら改造したキャンピングカーで日本を旅しているというイェンスさん。
サーモンラップはキャンプの定番料理の一つだそう。具材をテーブルに用意しておけば、薄パンは各自が焚火で温めて、思い思いのラップサンドができる。

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ナスもトウモロコシも、皮で守られていい具合に蒸し焼きになる。

ナスは表面が真っ黒になっても心配なし。皮の割れ目から蒸気が上がり、内側からジュワーッと汁が出てきたら中まで十分に火が通った合図。付け合わせのトウモロコシも一緒に皮ごと焼く。
「焚火で料理となると火の調節がけっこう難しいけれど、これなら火加減に気をつかわなくていいからおすすめです」。

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ナスの皮は少し残るぐらいのほうが、かえって香ばしさが出る。

丸焦げのナスは、ナイフでなでるだけで簡単に皮がむける。ここでのコツは、少しぐらい皮が残ってもOKということ。「この焦げがいい風味になるんです」

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サーモンは、生鮭を塩とオリーブオイルで軽くマリネをしておくのだが、ここでイェンスさんイチオシのスパイスをひと振り。パウダー状のスモークパプリカだ。
「これが加わるだけでぐっと深みが出ます。うちでは卵焼きにも使ってますよ。」焚火にフライパンをのせ、こんがりとソテーする。

 

焼きナス、ゴマペースト、ニンニクなどを合わせればババガヌシュの完成。
ババガヌシュは中東や地中海諸国で親しまれているナスと白ゴマのペーストで、パンや揚げ物のディップに、スティック野菜につけてと万能に使える。

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具材を好みで重ねていき、最後にレモンをひと搾り。

焚火で温めたパンにババガヌシュ、ほぐしたサーモン、好みのリーフ、サワークリームを重ね、レモンを搾りかけてくるりと巻けばサーモンラップの完成。
「おいしいものを重ねていくわけだから、そりゃおいしいでしょ」とイェンスさん。まったくその通りで、具材が見事にハーモナイズしている。サーモンの存在感がしっかりあって、ババガヌシュが全体をまとめ、焚火による焦げの風味がいいアクセントに。ビールに合わないはずがない。

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焚火で焼いたサーモンで作るラップサンドは香りが格別。

ホットドッグをデンマークスタイルで

イェンスさんのサーモンラップを受けて、せつこが用意したのはホットドック。
ソーセージは焚火で焼くものと、スモーカーで薫製するものを2種類用意し、食べ比べてもらおうという計らいだ。

「焚火料理って、そもそも薫製料理なんですよね。食材が煙をまとうわけだから。焚火は遠赤外線が出るから中までじんわり熱が入る。スモーカーはチップを使って密閉空間で燻すので、表面に香りが強めにつきます。ホットドッグにしたらどっちがおいしいかな〜〜〜」

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焚火で焼いたソーセージ、燻製したソーセージ、どちらも魅力的。

ソーセージをちょっと薫製するような時に、キッチンのコンロでも手軽に使えるスモーカーがとても便利だ。スモーカーの縁からもわもわと立ち上る煙が、「燻してますよ〜」と知らせてくれるようで微笑ましい。

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パンを開かず、横からソーセージを差し入れるのがフランスクドッグ。

ホットドック用のパンに縦にナイフを入れるせつこを見て、「もしかして!」とイェンスさん。
「そう、北欧ではこんなふうにして食べるよね」とせつこ。デンマークでフランスクドックと親しまれているホットドックで、パンに縦に親指ほどの太さの穴を開け、リモネードソースやケチャップ、マスタードなどを好みで入れ、ソーセージを差し入れるものだ。

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リモネードソースとピザソースはお好みで(両方つけてもOK)スティック野菜を用意しておけばソースにつけて食べられる。

「デンマークでは街角でよく見かけたけど、他にどんなところで売ってるの?」せつこ
「ガソリンスタンドには必ずあるね」イェンス
「ガソリンスタンド!?」せつこ
「デンマークでは、ガソリン代は併設の店の中で支払うんです。そのついでについ買っちゃう。片手で食べられるから、運転しながらでも、ね」イェンス
ソーセージに甘いリモネードソース。これが意外とハマる。ソーセージは焚火バージョンとスモーカーと、どちらがどんな感じかは、ぜひお試しを。

クラフトビールを一緒に

クラフトビール人気の昨今。世界的にはピルスナー、IPA、黒ビールなど100を超えるビアスタイル(種類)がある上に、フルーツやスパイス、お茶などの副原料を使ったビールも続々と登場。
デンマークはもちろん、日本でも各地で土地の個性を生かしたクラフトビールが生まれている。

UPI鎌倉併設のスコールは、焚火を中心としたアウトドアアイテムを手に取りながら、クラフトビールが飲めるというなんともフレンドリーな店。
神奈川の横須賀ビールと大阪の箕面ビールは樽詰めの生ビールがあり、最近は北海道の忽布古丹(ホップコタン)醸造のビールが加わった。
こちらは瓶のみだが、ホップの栽培に最適とされる上富良野にブルワーたちが集まり、2018年に創業した醸造所。希少な地のホップを100%使って醸すというだけで北の大地の香りがしてくる上に、ハスカップを用いたフルーツエールは夏の北海道全開!という印象だ。

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UPI鎌倉/スコールでは、タップから注ぐクラフトビールをぜひ!

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左から、忽布古丹(ホップコタン)醸造のウポポ(ピルスナー)、ノンノ(ペールエール)、ハシカプ(フルーツエールセゾン)。こちらもスコール鎌倉で味わえる。

料理にクラフトビールが添えられると、テーブルがパッと華やぐ。
どこでどんなふうに造られたビールなのか、その土地の風景に思いを馳せたりする。ともあれ、ビールをおいしそうに飲む人の顔を見ていると、ついこちらも笑顔がこぼれる。

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「夏はやっぱりビールだね」。イェンスさんの飲みっぷりに、せつこのこの笑顔。

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サーモンのラップサンド

■材料(4枚分)
薄パン(タコス用のトルティーヤなど) 4枚
生鮭(切り身) 2切れ
塩、オリーブ油、スモークパプリカ 各適量
好みのリーフ、レモン 適量
<ババガヌシュ>
ナス 3本
白ゴマペースト 大さじ2
ニンニク 1かけ
レモン汁 1/4個分
塩 少々 
サワークリーム 90ml
ディル(みじん切り)、レモン汁、塩 各適量

■作り方
1 ババガヌシュを作る。ナスは皮ごと、皮が真っ黒に焦げるまで丸焼きにし、熱いうちに皮をむく。ニンニクは皮ごと焼き、皮をむく。ボウルにナスとニンニクを入れてよく潰し、残りの材料を加えて混ぜ合わせる。
2 生鮭は塩とオリーブ油でマリネし、スモークパプリカをふって5分ほど置き、フライパンで両面をソテーする。
3 サワークリームにディル、レモン汁、塩を加えて混ぜ合わせる。
4 トルティーヤを温め、1をぬり、ほぐした2、リーフ、3をのせ、レモン汁を搾ってくるりと包む(手前を少し折り返して袋にすると中の具がこぼれにくい)

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フランスクドック

■材料(8本分)
ホットドッグ用のパン 8本
ソーセージ 8本
<リモネードソース>
マヨネーズ 1/2カップ
レモンママレードジャム 1/2カップ
ピザソース、パセリ 各適量
スティック野菜 適量
スモーク用のチップ(樹種はお好みで) 大さじ1

■作り方
1 マヨネーズとジャムを合わせてリモネードソースを作る。
2 ソーセージを焚火で焼くか、薫製する。(Cameronsを使用)
3 パンの方端を少し落とし、ナイフで縦に十字に切り込みを入れる(下まで貫通させないように)
4 好みでリモネードソースやピザソースを入れて押し込み、ソーセージを差し入れて完成。

 

■今回使用したUPIアイテムはこちら

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キャメロンズの「スモーカー」は、アウトドアだけでなく、家庭のガスコンロやIH、オーブンなど様々な熱源でさっと燻製できる手軽さが売り。持ち手が折り畳めるのでコンパクトに収納できる。チップのフレーバーが9種類もあるので、一度使えば燻製料理にハマること間違いなし!

>>Camerons「ミニスモーカー」

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フィールドで釣った魚を捌くために開発されたフィッシングナイフ。魚に刃が入りやすいよう薄くて小回りがきく。短いブレードは細かい作業に向いていて、調理全般で万能に使える。

>>MORAKNIV「フィッシング コンフォート フィレット 090」

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8月にUPIから販売予定のスケップシュルトのトラディショナルフライパン。スウェーデン製。鉄製の厚手のフライパンは、熱まわりがよく蓄熱性に優れ、肉も魚も上手に焼ける。持ち手に天然のブナ材を使っているのがいい。

 

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UPIのメンバーが、こんなレストランがあったら!を体現してみた一日限りの架空のレストラン。毎回ゲストシェフを迎え、UPIナビゲーターシェフ寒川せつこ(北欧ソト料理家)と共にお客様をもてなします。
人と場所、その季節の旬の食材など、一期一会から生まれる料理はどんなものになるだろう。客席には焚火や暖炉などの火があるといいな。そこからコミュニケーションが生まれ、ときには沈黙の時間があるかもしれない。そんなステキな時間に寄り添う料理でありたいね。
二人の料理人のメニューミーティングは、それは楽しく、新たな発見でいっぱいです。次回はどんなゲストが登場し、どんな料理がメニューにのるか、どうぞお楽しみに!

>>UPIレストランvol.1「アイヌとサーミ、北方民族の料理から」

寒川せつこ(さんがわ・せつこ)
寒川せつこ(さんがわ・せつこ)

北欧ソト料理家。スカンジナビアの雄大な自然と、豊かに暮らす人々との繋がりから、スカンジナビアのアウトドア、文化を主にお料理ワークショップを通して発信。レシピ提供したメディアは、「NHK 趣味どき!/たのしく防災!はじめてのキャンプ」、「メスティンレシピ」、「ソトレシピ」など多数。

大社優子 (おおこそ・ゆうこ)
大社優子 (おおこそ・ゆうこ)

写真家。横浜・アマノスタジオにて森日出夫氏に師事。独立後、様々な広告写真やドキュメンタリー、出版物を手掛ける。現在に至るまで個展、企画展などを各地で開催。“DARK ROOM PHOTO SESSION”というテーマをその都度変えたポートレイト撮影会も行っている。鎌倉在住。

増本幸恵(ますもと・ゆきえ)
増本幸恵(ますもと・ゆきえ)

編集者。レクスプレス、エイ出版社、文化出版局で暮しまわりの雑誌やムックに携わり、現在はフリーランスで活動。食にまつわる書籍や雑誌の編集を主に手掛ける。生涯のテーマは見知らぬ土地への旅。いつか行きたいのは、スペインの巡礼路と、スウェーデンの建築家アスプルンドが手掛けた森の礼拝堂。