心も癒される、あたたかな飲み物 〜世界のレシピ集:スカンジナビア、アメリカ、メキシコ編〜

レシピ01:スパイスであたたまる「グロッグ」(スカンジナビア)

Glögg(グロッグ)は古いスウェーデン語で「あたためる」という意味。その原形は、寒いなか馬やスキーにのって移動する電報配達人たちが飲んでいたスパイスリカー(スパイスの入った蒸留酒)だと言われている。

現在、グロッグといえば、スパイス入りのホットワイン。フランスでは「ヴァンショー」、ドイツでは「グリューワイン」として親しまれているが、スフェーデンではスパイスに加え、アーモンドとレーズンを入れるのが特徴だ。

「スウェーデンでは11月末からクリスマスに向けて、ジンジャークッキーやサフランパンと共に、グロッグを家族や友人で楽しむというのが風習です。この時期になるとスーパーにグロッグ用のミックススパイスや、できあいのグロッグも置かれ、クリスマスムードが高まります」とは、スウェーデン在住経験のある轡田(くつわだ)いずみさん。

「ぶどうジュースやベリージュースをベースにしたノンアルコールでも。クリスマスマーケットなどでは屋台でグロッグを楽しんでいます」

 

轡田さんが過ごしたストックホルムから北へ40 分ほど⾏ったところにある都市ウプサラ。冬は静かで寒く、冬至の頃は午後3時になるとあたりは真っ暗に。家に入ってグロッグであたたまる。(写真提供:轡田いずみ) ウプサラ近郊の町でのクリスマスマーケットの様子。グロッグを提供する出店も季節の定番だ。(写真提供:轡田いずみ)

 

家庭でグロッグを作るコツは、アルコールが飛ばないよう蓋をして加熱すること。できたてもおいしいが、消毒した保存瓶に移して3日ほど置くと、より味がなじみ、深みが出る。

 

グロッグの作り方(元祖王室レシピを現代アレンジで)

【材料】
・赤ワイン:750ml
・ポートワイン(または赤ワイン):750ml
・ブランデー(安価なもの):300〜400ml
・砂糖:1カップ
・アーモンド(無塩、ノンスモーク):1/2カップ
・ドライレーズン:1/4カップ
・オレンジの皮(白い部分を除いてスライス):1/2個分
・クローブホール:12粒
・シナモンスティック:10本
・カルダモンシード(房から出したもの):小さじ1/2

【作り方】
① 鍋にブランデーと砂糖以外の材料を入れ、蓋をして温める。
② 別の鍋に半量のブランデーと砂糖を入れて火にかけ、砂糖が溶けてとろみがついたら1と合わせ、蓋をして弱火で30分ほど煮込む。
③ 火を止め、クローブ、シナモン、カルダモンを取り出し、残りのブランデーを加えて完成。
*ワインをぶどうジュースにすればノンアルコールグロッグに。


 

レシピ02:ハシータおばあちゃん直伝「チョコラテ」

カカオの原産地であるメキシコ。この地で、マヤ時代やアステカ時代から飲まれているのがチョコラテだ。

カカオにアーモンドとシナモンが加わるチョコラテ。ココアより複雑な風味があり、飲めば元気が湧いてくる。(写真提供:Familia TSUGAOKA)

 

CHOCOLATE(チョコラテ)。英語の発音ならチョコレートだ。チョコラテとは、カカオとアーモンドをすりつぶし、シナモンと砂糖を加えて練り込んだものをお団子のように丸めて乾燥させたもの。これをあたためた牛乳に入れて溶かし、チョコレートドリンクとして楽しむ。子どもたちはそのまま口に入れておやつがわりにもなるとか。

 

メキシコの陶器にチョコラテをたっぷり!(写真提供:Familia TSUGAOKA)

 

チョコラテの本場、オアハカでは、陶器の器にたっぷり入ったチョコラテにブリオッシュのようなパンを浸して食べるのが朝の定番です」と、メキシコ・オアハカ在住のツガオカファミリー。2011年にメキシコに家族で移住し、地元の暮らしにどっぷりと浸かりながら、土地に息づく文化を伝えている。

ツガオカさんが教えてくれたのが、近所に暮らすハシータおばあちゃんのチョコラテだ。「素朴ながら豊かな風味で、ほんのり甘くて、苦くて、香ばしくて……」。そんなハシータおばあちゃん直伝のチョコラテは、Familia TSUGAOKAのホームページで販売している。

 

左:サン・パブロ・エトラ村のハシータおばあちゃん。この土地の先住民であるサポテコ人の血を引く(写真提供:Familia TSUGAOKA)
右:オアハカの市場の一角にある老舗チョコラテ屋。良質な材料を揃え、好みに合わせてブレンドしてもらえる。(写真提供:Familia TSUGAOKA)

 

チョコラテの粒が手に入れば、作り方はごくごく簡単! 現地にはモリニージョという専用のかき混ぜ棒で混ぜるのがお決まりだが、泡立て器やハンドミキサーでもおいしくできる。コツは、溶かしながらしっかり混ぜること。

 

チョコラテの作り方(オアハカスタイル)

【材料(1杯分)】
・チョコラテ 1粒(約10g)
・牛乳 約120ml

【作り方】
 ① 牛乳をポットや鍋に入れて弱火にかけ、しっかり温める。
 ② チョコラテを入れ、モリニージョ(かき混ぜ棒)や泡立て器などで溶かしながらふんわりと泡立てて仕上げる。

ポットや鍋をコンロにかけながら、モリニージョでふんわり泡立てる。(写真提供:Familia TSUGAOKA)

 


 

レシピ03:子どもも大好きな「エッグノッグ」(アメリカ合衆国)

 

アメリカの冬の飲み物として老若男女に愛されているのがエッグノッグ。一説には、語源は「エッグ&グロッグ」とのこと。材料は卵、牛乳、砂糖。日本ではミルクセーキでおなじみだが、アメリカでは寒い季節によく飲まれるホットドリンクだ。

「11月末ぐらいから、エッグノッグのパックをスーパーで見かけると、そろそろクリスマスだなぁと。1ガロンボトル入りの牛乳の隣に並んでいて、子どもから年配のかたまで、本当にみんな大好き」とは、アメリカ出身のニール・ククルカさん(UPI 鎌倉・表参道 スタッフ)。

「体が疲れているときにいただくと、いかにも滋養がつき、あたたかく、元気になります。ラムやウイスキーを落としてもおいしいです。そういうカクテルもありますね」

今回は、ナツメグやシナモンも加え、よりスパイシーな香りと体をあたためる効果があるレシピをご紹介。作り方のコツは、鍋であたためる際に、卵が固まらないよう手早く泡立てること。作ってから一度落ち着かせ、あたため直していただくとよりおいしい。

 

エッグノッグの作り方

【材料】(1杯分)
・牛乳:180ml
・卵:1個
・砂糖:大さじ1
・シナモンパウダー:お好みの量
・ナツメグパウダー:お好みの量

【作り方】
 ① ボウルに卵を溶き、スパイス、砂糖を加えて泡立て器でよく混ぜる。
 ② 牛乳を少しづつ加え、更によく混ぜる。
 ③ 鍋に2を入れて弱火にかけ、とろみがつくまで混ぜながら加熱する。
 ④ カップに注ぎ、シナモンパウダーをふる。
 *お好みで、カルダモンなど他のスパイスに変更しても。
 *お好みで、ラム酒やバーボンなどを適量加えてもよい。


 

ここで紹介しているレシピを参考に、ぜひ作ってあげる相手や、自分の好み、シチュエーションに合わせてアンレジしてもらえればと思う。あたたかな飲み物とは、物理的にホットなだけではなく、思いやる気持ちが伝わるものだと思うから。

レシピ監修:SETSUKO SANGAWA
文 : YUKIE MASUMOTO

寒川せつこ(さんがわ・せつこ)
寒川せつこ(さんがわ・せつこ)

北欧ソト料理家。スカンジナビアの雄大な自然と、豊かに暮らす人々との繋がりから、スカンジナビアのアウトドア、文化を主にお料理ワークショップを通して発信。レシピ提供したメディアは、「NHK 趣味どき!/たのしく防災!はじめてのキャンプ」、「メスティンレシピ」、「ソトレシピ」など多数。

轡田いずみ(くつわだ・いずみ)
轡田いずみ(くつわだ・いずみ)

大学在学中にスウェーデン・ウプサラ大学に留学。会社勤務を経て2015年に独立。現在、株式会社ノルディック・インスピレーション代表。「北欧の教育・学び リラ・トゥーレン」主宰。

Familia TSUGAOKA
Familia TSUGAOKA

メキシコ・オアハカで暮らしている子育て真っ最中の日本人ファミリー。音楽を糧の中心に、オアハカで出会ったメキシコ先住民ハシータおばあちゃんの極上ラテを、彼女と手作りしている。メキシコシティのパン屋さんやオアハカの工芸品を扱う5店舗と、インターネットにて販売中。

増本幸恵(ますもと・ゆきえ)
増本幸恵(ますもと・ゆきえ)

編集者。レクスプレス、エイ出版社、文化出版局で暮しまわりの雑誌やムックに携わり、現在はフリーランスで活動。食にまつわる書籍や雑誌の編集を主に手掛ける。生涯のテーマは見知らぬ土地への旅。いつか行きたいのは、スペインの巡礼路と、スウェーデンの建築家アスプルンドが手掛けた森の礼拝堂。