モーラナイフの選び方・アウトドアシリーズ編 〜キャンプで使えるナイフの選び方〜

ナイフは自然とのコミュニケーションツール

昔からキャンプに欠かせない道具としてナイフがありました。もちろん、今なら包丁を持っていけば家のキッチンのように調理はできますし、着火剤やガスバーナーを使えば誰でも簡単に太い薪に火を付けることができます。

そんな時代だからこそ、ナイフを1本持つだけで、都会から自然のなかへとスイッチが切り替わります。ナイフで薪を割り、フェザースティックを作り、刃背でスパークさせて着火する。そんな手間をかけて作った火で焚き火を熾すという楽しみ。

わざわざ不便を楽しむためにキャンプに行くわけではありませんが、それはある意味、豊かな時間を過ごすためには必要かつ大切なプロセスといっていいでしょう。

どんなアプローチでどう自然を楽しむか。そこに1本のナイフがあるだけで、自然と自分とのつながりを深めることができます。ナイフは自然とのコミュニケーションツール。そんな道具なのかもしれません。

目次:

01 モーラナイフ・アウトドアシリーズの特徴

02 目的から選ぶ

03 ラインナップから選ぶ

<コラム> 私ならモーラナイフをこう選ぶ by 越山哲老 


モーラナイフ・アウトドアシリーズの特徴

Outdoor」はモーラナイフの主力シリーズで、キャンプやブッシュクラフトなどアウトドアの幅広いシーンで活躍するナイフが揃っています。ラインナップは大きく分けて5モデルがあり、いずれも伝統的な製法による強固なブレードに樹脂ハンドルを備えることで、キャンプやブッシュクラフトでのハードな使用にも耐える作りです。

モデルごとにそれぞれ得意分野が少しずつ異なっており、ご自身の経験や目的、用途に合わせて選べます。そんなモーラナイフの特徴をご紹介していきます。

強さと鋭さを兼ね備えたスカンジグラインド

モーラナイフの刃はくさび形の断面をしています。これは北極圏の伝統的な生活ナイフに使われてきた形状で、「スカンジグラインド」と呼ばれています。刃から刃背までの約3分の1が鋭角に削り落とされたベヴェル(斜面)が見た目上の大きな特徴ですが、この形状が強さと鋭さを兼ね備える秘訣です。

スカンジグラインドは刃持がよいために、バトニングで薪を割ったり、フェザースティックを削ったりといったタフな使い方を得意としています。

ナイフで薪を割るバトニングでは、叩くごとにナイフのベヴェルが薪を押し広げます。刃で断ち切るのではなく、クサビで広げて薪を割る。これもスカンジグラインドの形状が得意とする持ち味です。

スカンジグラインド以外では、まっすぐ研ぎ上げた「ストレートエッジ」や、コンケーブ(凹状)に削った「ホローエッジ」があります。これらはほとんど段差のない平面的な薄刃が特徴で、主にハンティングナイフに用いられています。

なぜモーラナイフは低価格なのか

モーラナイフは実用的なナイフです。職人たちの手で伝統的に受け継がれてきた丈夫な刃造りと握りやすいグリップを、工業製品として量産することで価格を抑えています。特にグリップに樹脂を使うことで低価格で販売できるようになりました。高価なナイフとの違いはここにあり、ナイフ自体の強度や耐久性、切れ味の鋭さは高価格なハンドメイドナイフにも負けることはありません。ナイフは価格ではなく、大事なのは性能です。

 刃長、刃厚の違いでナイフを選ぶ

モーラナイフのアウトドアシリーズには、刃厚と刃長でそれぞれ3種類のバリエーションがあります。

刃厚は主に(2.0mm2.5mm3.2mm)の3種類。刃(ブレード)が薄いほど肉や魚、野菜が切りやすく、細かい作業に向いています。また、刃が肉厚なほどクサビ効果で薪を割りやすく、タフな使い方でも安心です。

刃長も主に(59mm104mm109mm)の3種類。刃の長さが短いほど扱いやすく、細かい作業に向いています。刃長が長ければ太めの薪を割るときも有利で、作業が効率的になります。

切れ味のカーボンか、手入れの楽なステンレスか

ブレードの鋼材はカーボンとステンレスがあります。カーボンは硬く鋭く粘りある切れ味が特徴で、ステンレスはカーボンに比べると硬度が少しやわらかいですが、錆びにくく、メンテナンスが簡単というメリットがあります。

カーボンはサビに弱いので、使うごとのメンテナンスが重要です。ただし、ステンレスでもメンテナンスが不要というわけではありません。薪や木を切ったあとの樹液や食材の汚れは、ブレードの劣化やサビの原因になります。

カーボンでもステンレスでも、使ったあとはこまめに汚れを拭き取り、キャンプから帰ったら、できれば食器用洗剤で洗って、水気を拭いてからよく乾かして下さい。カーボンの場合は、オイル(鉱物油を避け植物油など)を塗って保管することをお勧めします。

スプーンやフォークは食事のあとは必ず洗ってからしまうように、アウトドアナイフも同じことです。


目的から選ぶ

「調理する」

野菜の皮を剥いて切り、肉や魚をカットするには、刃が薄いタイプがお勧めです。また、メンテナンスが容易なステンレス鋼が使いやすいでしょう。「コンパニオン」は刃厚2.5mm、「エルドリス スタンダード」「エルドリス ライトデューティ」は刃厚2.0mmです。

おすすめのモデル:コンパニオン/エルドリス スタンダード/エルドリス ライトデューティ

「薪を割る」

スカンジグラインドを備えたモーラナイフのアウドドアシリーズは、どのナイフでも薪割りが可能です。なかでもお勧めは、最もブレードが厚い刃厚3.2mmのもの。バトニングでも安心の強度があり、厚みによってクサビ効果が増し、薪を割りやすくなります。

おすすめのモデル:ガーバーグブッシュクラフトコンパニオン ヘビーデューティ

「着火に使う」

ブレードの背にエッジ加工してあるモデルは、すべてファイヤースターターでの着火が可能です。また「コンパニオン スパーク」はグリップエンドに収納するファイヤースターターとパラコードが付属し、そのほかのモデルはパラコード付きファイヤースターターが付属したシースを選べます。

おすすめのモデル:ガーバーグブッシュクラフト(一部を除く)/カンスボルコンパニオン スパークエルドリス スタンダード

「多目的に使う」

刃厚2.5mmのブレードを先端に向けて薄く仕上げた「カンスボル」は、肉や皮を切り裂く鋭さを持ちながら、グリップ側では薪割りができるタフさを兼ね備え、さらに背では着火もできるというオールラウンダー。その「カンスボル」の機能をそのままコンパクトにしたのが「エルドリス」です。(「エルドリス ライトデューティ」は背での着火ができません。)

おすすめのモデル:カンスボルエルドリス

 


ラインナップから選ぶ

Garberg ガーバーグ
全長229mm、刃長109mm、刃厚3.2mm、ステンレス / カーボン、着火○
全ラインナップのなかで最も強靱で耐久性が高く、重量感のあるハイエンドモデル。鋼材がグリップエンドまで通ったフルタング構造で、グリップは堅牢なポリアミドを採用。バトニング(薪割り)で威力を発揮するほか、グリップエンド側から叩き込めば、太い枝や丸太の切断なども可能です。

ブレードはステンレスとブラックコーティングが施されたカーボンの2種類から。左利きでも使いやすい左右対称のプラスチックシースをはじめ、付属品の内容で4種類のシースから選べます。

 

Bushcraft ブッシュクラフト
全長232mm、刃長109mm、刃厚3.2mm(一部2.5mm)、ステンレス / カーボン、着火○
ガーバーグ同様タフに使える刃長109mm、刃厚3.2mm仕様で、着火も可能(一部を除く)と、その名の通り、ブッシュクラフトに最適なモデル。最大の特長は、握りやすい形状にデザインされたラバーグリップ。握り込んだ指と手のひらにしっかりフィットし、安全で効率よい作業が可能です。

ステンレス、カーボンから選べるほか、波刃や刃厚2.5mm付きブレードモデルなどがあります。シースは非対称で、ファイヤースターターとシャープナーを装備したサバイバルシースもあります。

 

Kansbol カンスボル
全長226mm、刃長109mm、刃厚2.5mm、ステンレス、着火○
もともとハンティング向きに開発されたモデルで、2.5mm厚のタフなスカンジグラインドのブレードに、皮や肉に刃が入りやすいよう刃厚を先端に向けて薄く仕上げています。薄刃部分は調理に使え、手元では薪を割れ、なおかつ着火が可能なオールラウンダー。プラスチックシースは左利でも使いやすい左右対称タイプ。付属品の違いで3種類から選べます。

 

Companion コンパニオン
全長214〜219mm、刃長104mm(一部除く)、刃厚2.0、2.5、3.2mm、ステンレス(カーボン)、着火×(○)
汎用性の高さとコストパフォーマンスに優れた人気モデル。扱いやすいサイズ感と軽さは女性や、初めて選ぶナイフとしても最適。そのうえモーラナイフの優れた性能を兼ね備え、経験豊富なキャンパーからも高い信頼を得ています。

切ることに特化したモデルなので、背に指を掛けて使うことも想定し、着火機能はなし。豊富なカラーとタイプが揃い、なかでも薪割りに強い3.2mmの刃厚を持つ「コンパニオン ヘビーデューティ」は高い人気を誇っています。ほかに着火機能のある「コンパニオン スパーク」、刃厚の薄いカーボンモデル「コンパニオンMGカーボン」、波刃付きでレスキュー現場で活躍する「コンパニオン レスキューSRT」「コンパニオン レスキューSRTセーフ」があります。

 

Eldris エルドリス
全長143mm、刃長59mm、刃厚2.0mm、ステンレス、着火○(×)
モーラナイフの強さと切れ味をそのままに、フォールディングナイフのような携行性を実現したコンパクトタイプ。刃先が薄くなっているので、果物の皮むきなど調理にも。カラーも豊富で女性にも人気です。ファイヤースターターとパラコードがセットになった首から提げるシースの「ネックナイフキット」が便利です。

「エルドリス スタンダード」から刃先を薄くする加工と、刃背のエッジ加工を省いたシンプルなモデルが「エルドリス ライトデューティ」。切ることに特化したモデルなので着火はできませんが、そのぶん、価格を抑えたコンパクトタイプの入門モデルです。


<コラム>”私ならモーラナイフをこう選ぶ”
越山哲老(UPIナイフ&ブッシュクラフトインストラクター)

僕はよく「ナイフを3本持って行きましょう」と言っています。まず大前提として、1本ですべてはまかなえないんです。調理をメインに考えているのか、それとも薪割りやフェザースティック作りなのかで大きく分かれる。究極のクルマを1台といっても、フェラーリで山を走れないじゃないですか。それと同じです。

というわけで、僕なら刃厚3.2mmの「ガーバーグ」と2.5mmの「コンパニオン」、あとは小さな刃を持つ「エルドリス」を選びます。それぞれ目的が違いますからね。

調理には刃の薄い「コンパニオン」が向いています。小回りも効くし、鋭いし、細かい作業もできて、女性でも扱いやすいサイズ感。ローストビーフを切れますし、川魚の薄造りくらいはできます。それでも多少の薪は割れるし、フェザースティックも作れる。

一方、「ガーバーグ」は薪割りやフェザースティック作りでガンガン使えます。刃が肉厚なほど薪は割りやすいんです。けれどもその反面、調理に使うには少々無理がでる。刃が厚いクサビ状なので、ジャガイモとかリンゴを割っちゃうんですよ。まあ、カレーとかシチューならそれでもいいじゃないですか。でも、薄くスライスするのはちょっと厳しい。

「エルドリス」は首から提げてワンハンドで抜いて使って、ワンハンドで戻すことができる。この手軽さです。そのうえフロント部の刃が薄いので、フルーツの皮をむくこともできる。なおかつ、根元では薪も割れますし、背ではメタルマッチで火も点けられる。だから、僕はミニマムサバイバルツールと呼んでいます。

最低でも2本ということなら、僕は「コンパニオン」と「ガーバーグ」、あるいは「エルドリス」と「ガーバーグ」をお勧めします。軽トラックとジープの役割の違いといったらわかりやすいかもしれません。

もしも1本だけだとしたら「ガーバーグ」です。何かを減らしていくのなら、タフなものは最後まで残してほしいんです。それでできないことは技術でカバーということです。

ご夫妻やカップルなら、それぞれ1本ずつ持つというやり方もいいですね。男性は「ガーバーグ」で薪を割り、女性は「コンパニオン」で食事の支度。そしてお互いある程度作業が進んだ時点で、今度は二人並んで仲良くフェザースティックを削る。そんな美しくも楽しいキャンプのワンシーンが思い浮かんできます。


※UPI(株式会社アンプラージュインターナショナル)は「モーラナイフ」の日本総代理店です。

TEXT BY CHIKARA TERAKURA

寺倉 力(てらくら・ちから)
寺倉 力(てらくら・ちから)

ライター+編集者。高校時代に登山に目覚め、大学時代は社会人山岳会でアルパインクライミングに没頭。現在、編集長としてスキー&スノーボードマガジン「Fall Line」を手がけつつ、フリーランスとして各メディアで活動中。登山誌「PEAKS」では10年以上人物インタビュー連載を続けている。

越山 哲老(こしやま・さとし)
越山 哲老(こしやま・さとし)

UPIナイフ&ブッシュクラフトインストラクター。2015年よりUPIが主催するモーラナイフのワークショップ講師を務め、2019年からパスファインダーのインストラクターも務める。長年培ってきたナイフ全般の知識・経験・技術に加え、ブッシュクラフトのさまざまな技術まで幅広くカバーする。