日本一の水量を誇る吉野川
梅雨空が続く初夏の吉野川。
四国を代表する石鎚山系と剣山系の支流の水が集まり紀伊水道へと流れ出す吉野川は、その雨量の多さもあり最大水量が日本一だ。南北に流れる大歩危小歩危エリアは特に渓谷が深く荒々しい姿を見せるが、西から東へと流れるそれより下流部は徳島平野に向け悠々とした流れ河原が広大である。
しかし大雨が続いた後、その姿は一変し河原は全て水の通り道になる。そのためこの川の下流域は水面近くに家などは無いし川の両サイドは竹林のエリアが多い。そのため川幅が広く雄大な眺望が特徴だ。
川辺に広がる林。水面目線だと人工物があまり見えない。
1dayツーリング。焚き火道具やランチセットなどをハッチに詰め込むと川の旅へ出発だ。
風の通り道でもある川の上をツーリングカヤックで移動する川旅は風の影響を受けやすい。川下りをしたことがある人なら向かい風に苦しめられた経験があるはずだ。
なのでそんな場所をメインフィールドにしている僕は長さがあり荷物をたくさん載せられるツーリングカヤックに乗り続けている。キャンプ道具や釣り道具、潜り道具や料理道具など詰め込み、これで川旅はもちろん沿岸の海旅へも出かけている。
地形がコンパクトな日本の川では晴れると海と陸の温度差で下流から上流へと風が吹くことが多く、かつてはその風を使い帆船で物流を行なっていた。他の場所でも大きな川のそばに鉄道が走っているのは時代により物流が船から鉄道へと変化したからだ。
そのため川沿いの町はもともと湊町として栄えていた町だ。水が流れている場所には文化がある。自然を楽しみつつもそんな目線で川から上陸し町を散策するのが面白い。
吉野川の魅力は河原の広さと水質の良さと共に、その名残が多く残っているところでもある。
水のアクティビティとウールパワー
急な雨や風で寒い思いをすることは自然の中に出ていく以上想定しておかなくてはならない。とは言え、誰でも冷えて寒い思いをしたことはあるのではないでしょうか?
川下りの場合、ちょっとした雨に降られたり、瀬を下って少し濡れてしまった時はな尚更体温を奪われてしまう。
曇り空で少し寒い。そんな時に選ぶウエアは「半袖のウール」だ。
動きやすく、濡れても体温が奪われない。ウール素材が持つ撥水性で少々の水は弾いてくれるので小雨ぐらいだと気にならない。
もちろん快晴で蒸し暑い四国の夏には速乾Tシャツがベストだが、少し寒いと感じる日は決まってウールを選んでいる。
そして意外によく使うシーンが夏で、水に入ることが多い場合だ。
ウエットスーツを着るほどでもないけど少し肌寒い、そんな時もベースレイヤーはウールだ。
夏のリバートレッキングツアーや沢登りの時も着ることが多い。8月に入りアブが出始めてもウールパワーの少し厚手の生地が肌を守ってくれる。その厚さのため耐久性もあり擦り傷も防いでくれる。
ウールウェアの生地の厚さで暑過ぎる時は水に飛び込んで体温調整すればいい。
薄手のウエットスーツを着ている感覚でそのまま泳いでしまうことも多い。水中で一枚着ている安心感、そして水から上がった時の体温が奪われない感覚もいい。
2重構造になっているウールの繊維は表面はウロコ状で撥水性があり繊維内に保水する。そのため肌に接する部分が冷たく感じにくいためだ。
冬のアルパインジャケットやドライスーツのベースレイヤーから夏の水遊びまで幅広く使っているので1年中すぐに出せる場所に置いてあるのがウールのベースレイヤーの特徴だ。
1年を通して一番出番が多いティーライト
初夏の南国でも
ここ数年、毎年行っている春の沖縄「西表島コーラルウェイトレッキング」ツアー。
西表島の道路の通っていない南部海岸を、春の大潮の時に出来る珊瑚の道を使って歩くトレッキングだ。
現地ガイドと共に南部の南風田の浜を出発し、途中ビバークをしながら2泊3日で東部にある船でしか行けない船浮集落までを歩く。
南の島への旅はタープが必須だ
潮が引き歩ける水位になったコーラルウェイ。ビーチや岩場を歩くよりハイペースで歩いて行ける。もちろん生きた珊瑚は踏まないように。
3月後半から4月始めの沖縄。太陽が出るともう夏のような暑さだが曇り空や雨になると少し寒い。
ビーチや岩場や川の中やマングローブ林や峠も越えて歩いていく3日間。天候も変わりやすく晴れたと思うと雨が降り出すこともある。でもレインウエアを着ると暑すぎる。そんな条件の時にもウールは活躍してくれる。
天候はコロコロ変わるので濡れてしまったら絞って強烈な日差しが出た時に流木をハンガーにして乾かせばよい。このような変化が激しい状況下でも1枚あると安心だ。
何より着続けても臭くならないのがキャンプ生活ではありがたい。最長で1ヶ月近く着続けたこともあるが皮脂での目詰まり感は出てくるものの、天気がいい日に洗えばずっと着続けられる。
低体温症にならないための保温性や、長時間着続けてもにおわない消臭性を重視する場合、単に運動による汗冷え対策を重視する場合など多様なシーンで使われるウールだが、最初から水に濡れる想定というシーンでの使用も加えることでさらに1年を通して使用頻度が上がるのだ。
TEXT:TAKESHI USHIO
PHOTOGRAPHY:AIKO USHIO